お客様からある情報が寄せられました。
「規格が変わって、プルオフ試験で使用するドリー(試験円筒)はφ7mmを使用することになった…と聞いたのですが、φ7mmのドリーはあるのですか?」
びっくりしました。
ドリーの直径を小さくする(=接着面積を小さくする)と、試験精度がどうしても低下します。それはさまざまな実験で確かめられていることです。ですから、いきなりφ20mmからφ7mmに規格を変えるとは思えませんでした。
COTECにあるJIS ハンドブックは2014年版でした。この間にJIS K5600-5-7に大きな変更はなかったと記憶していましたが、念のためにWeb上の情報を検索してみました。するとどういうことか…
「…付着強度試験を片側からだけ行う場合には、直径7mmの試験円筒を使用する」
と掲載されていました。お客様の言われたことは本当(?)でした。
そして、私たちは念のために最新の2016年版JIS ハンドブック(※)を購入したのです。
※お問い合わせをいただいた当時の最新版です。現在は今年のハンドブックが出ております。
私はこう思います。
情報とお刺身はよく似ている…と。
ネタの良し悪し、鮮度、切り口が重要だと。
今回は残念ながらネタに問題があったようです。
最新の2016年版JIS ハンドブックには、こう記載されていました(便利ですね。Amazonで購入したら翌日には届きました)。
「試験円筒は、ほかで規定がない場合は、直径20mmで、接着面は試験中に変形することのない十分な厚さを持つ。その長さは直径の半分以上であることを推奨する。付着強度試験を片側からだけ行う場合には、直径7mmの試験円筒を使用してもよい。直径7mmの試験円筒を使用する場合には、試験精度を出すために繰り返し10回の試験を実施し、試験報告書には使用した試験円筒の直径を記録する」
たしかに、7mmの試験円筒を使用しても良いという記載が加わりました。7mmの試験円筒を使用する…ではなく『使用してもよい』という消極的な許可です。消極的になる理由は、何といっても試験の結果にバラつきが生じる恐れがあるためです。そのため規格では10回も試験する、さらにはφ20mmの試験ではなかったことを記録に残すように命じています。接着できる面積が小さいなど特殊なケースを想定した救済策としての追記と考えられます。
もちろん、試験円筒の直径は大きい方が試験のバラつきは小さくなることが一般に知られています。
バラつきの大きな試験記録は試験の有効性が後で疑問視されますので、やはりφ20mmで試験されることが原則です。
さらに補足しますと、引張試験機について、
「水圧式、手動式装置は、結果がばらつくとの報告があるので、これらを使用した場合は、試験報告書に使用した試験機を記録しなければならない」
という記載が加わりました。手動式の測定精度に懸念があることが、はっきりと記載されたことになります。
手動式をお持ちの方はご注意ください。
塗装あるいはコーティング膜を形成するお仕事にある方は、正式にJIS規格に則って運用される場合には、JISハンドブックを常備されることをお勧めしたいと思います。ネタはやはり出どころ(産地)のしっかりしたものを選びたいものです。
ところで、切り口も大事ですね。
同じネタを使っても、私が切るのと、優れた板さんが切るのとでは、味は大違いです。
同じネタなのに不思議です。
切り口の重要さを考えつつ、ブログの回も重ねていきたいと思います。
今回も最後までお付き合いをいただきありがとうございました。
posted by COTEC(コーテック) at 20:00
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